皆さん、ご機嫌よう! タカミックスです。
今回は初めて聴いた時、まさに衝撃を受けた第二期ディープ・パープルの、そしてライブ・アルバムの代表的な作品の一つである1972年に発売された『ライブ・イン・ジャパン』についてです。
それでは行ってみまShow!
目次
初めて聴いたライブ・アルバム
実はタカミックス、ライブ・アルバムって余り好きじゃないんですよ! いや、自分がライブするのは大好きですよ!
何故ライブ・アルバムが好きじゃなくなったかって言うとですね… 初めて聴いたライブ・アルバムがライブ・イン・ジャパンたったからなのです。
そう、ライブ・イン・ジャパンが余りに素晴らし過ぎて他のライブ盤が物足りなくなってしまったのです。
まず演奏のパワーからして違う! とにかく音がデカい。そしてオープニングナンバーのハイウェイ・スター! 徐々に音が重なり合って始まって行く高揚感、痺れました。
しっかし、イアン・ギランのシャウトの凄いこと凄いこと。
また、ジョン・ロードとリッチー・ブラックモアもインプロビゼーション全開でアグレッシブな演奏を聴かせてくれます。
強いて理由を上げるなら
まぁ、強いてライブ盤を好んで聴かない理由を上げるなら、スタジオアルバムのライブ再現が出来ないバンド編成が嫌いだったりするのもあります。
演奏能力という意味ではなくて、ギターが1本のバンドならスタジオアルバムでのギターソロはバッキングギターも同時に録音されます。しかしライブではサポートメンバーでもいない限りバッキングギターはありません。すると必然的に2本あったギター音が1本のギター音のみになる訳です。なのでギターソロに入ると音が痩せた様に感じるんですよ(実際は違うのだがタカミックスは音痩せに感じる)。
どうも元々クラシックギター出身だから、と言う訳でもないのでしょうが、楽譜(この場合はスタジオアルバム)の再現性が低い演奏ってどうなのよ? って思っちゃうんですね。これはインプロすんな、って意味じゃないですよ? (実際クラシックにもフリー・インプロビゼーションがありますんで)
逆に友人のバンド仲間はスリーピースのバンド編成に拘っており、アルバムはオーバーダビングでOKであり、煮詰めて録音したいと言う考え方の人間です。それをスリーピースでアレンジしてライブ再現するのが楽しいと言ってました。
なので人それぞれの考え方ですね。
第二期ディープ・パープルの魅力
第二期ディープ・パープルの魅力はライブはライブ、スタジオ・アルバムはあくまで基本フォーマットとして曲を並べてある感覚です。
第一期ディープ・パープルも第三期ディープ・パープル、そしてそれ以降のディープ・パープルも同じなのですが、この第二期ディープ・パープルは特にメンバー間の実力が乗りに乗っている時期でもあったので一層魅力が引き立っていたのです。
第二期ディープ・パープルのアルバムではリッチー・ブラックモアもオーバーダビングでギターを録っています。
しかしリッチー・ブラックモアの魅力は即興演奏だと思います。この即興にアーミングが絡みフレージング+アーミングの独特な響きを醸し出しています。
なので尺の決まっているアルバムの曲より、ライブで自在に操れる曲(ある程度の決まりはあるが)の方が魅力が出るのです。またギターバッキングに関してはジョン・ロードのハモンド・オルガンが代用してくれるので問題ありません。
やる気がなかった? ライブアルバムのレコーディング
ここで有名な話ですが、実はライブ・イン・ジャパンのライブアルバムのレコーディングにディープ・パープル側はスタッフ含め誰一人乗り気でなかったと言うことです。
とは言えディープ・パープル側としてはアルバム発売契約(1年間に2枚のアルバム発売)も消化できるので条件付きでライブアルバムのレコーディングを許可します。ただこの条件というのが結構過酷な条件でありました。その条件とは
- 発売は日本のみである日本限定盤。
- 演奏の状態が悪ければ発売しない。
- 発売可否の決定はバンド側。
- 全てのミックスはバンド側。
- レコーディングもバンド側。
何だ、この条件? って感じですね。もっとも当時は今と違い日本と言う国はあくまで極東の島国、一般的な英米人にとって『日本』自体が聞いたことがない国、聞いたことはあっても日本は丁髷結ってる侍の国、文化的後進国と見られていました。
そしてライブレコーディングの件も含め来日したディープパープルですが、バンド側の録音機材にトラブルがあったらしく、ライブの録音機材は日本側が用意した物を使用することになります。
しかし、ディープ・パープルのメンバーおよびスタッフ(同行した録音エンジニアはマーティン・バーチ)はその日本製機材を見て愕然としました。そのディープ・パープル側を愕然とさせた日本製機材がオタリ社のハーフインチ8トラックのマルチトラックレコーダーでした。
当時の日本でも16トラックのマルチトラックレコーダーは準備できたのですが、取り回しの良さを考えて8トラックの製品を2台使用したそうです。更にオープンリールのテープ幅はハーフインチ、1/2サイズでした(音質にはテープ幅も影響する)。
これにはディープ・パープル側も日本製機材は小さいので性能も推して知るべし、まともなレコーディングはできないだろうと思っていたそうです。
事実ジョン・ロードは日本製機材でのレコーディングは考えずに演奏に集中できたと答えています。
まぁ、逆にロジャー・グローバーは初日はレコーディングが気になって堅い演奏になってしまったと答えていますがね…
実際は凄い音質
そんな日本製機材で録音したライブ・イン・ジャパンですがディープ・パープル側の想像とは裏腹に素晴らしい高音質で録音がされました。
先にライブレコーディングに対し過酷な条件を突き付けていたディープ・パープル側でしたが、日本製機材に面くらい、日本のみでの発売と言うこともあり、録音に関しては一切手を付けずに日本人のみで完成させたライブアルバムとなったのです。
そんなテストプレスされたライブ・イン・ジャパンを聴いたディープ・パープルのメンバーは驚きました。それは余りにも素晴らしい音質で録音されていたからです。
全く期待をしていなかった日本製の録音機材を使ってのライブ録音であったので余計に驚いたのです。そんな余りに素晴らしい出来のライブアルバムは改めてロジャー・グローバーとイアン・ペイスがミックスを仕直し、マーティン・バーチがまとめた物を日本のみではない公式なアルバム『メイド・イン・ジャパン』として発売したのでした。
蛇足① 〜 何故アルバムジャケットが違うのか
ライブ・イン・ジャパンとメイド・イン・ジャパンではタイトル以外にもアルバムジャケットが違います。タカミックスはステージ後方上部から客席までも映し出したライブ・イン・ジャパンのジャケットの方が臨場感があって好きなんですけど、メイド・イン・ジャパンは客席から撮ったステージ上のメンバーのみの写真です。
何で同じアルバムなのにジャケットが違うのか? と言うと、ライブ・イン・ジャパンはアルバムジャケットも含め日本人のみで完成させたアルバムだったからです。
ディープ・パープル側としては日本限定盤で作ったアルバムだったので、日本人が撮影した写真がレコードジャケットに使われていても問題がなかったのです。
しかし、公式なアルバムとしてワールドワイドに発売するからには権利関係の問題もあり、改めて ディープ・パープル側が用意した写真をアルバムジャケットに使用したのがジャケット違いの理由だそうです。
録音は日本武道館?
このライブ・イン・ジャパンのレコードジャケットは日本武道館のステージ上部後方からアリーナ席全体を捉えるショットになっております。
なのでライブ・イン・ジャパンのレコーディングは全て日本武道館で行われたと勘違いしそうですが、実際アルバム全7曲中で日本武道館で録音されたのは『ミュール』と『レイジー』の2曲のみです。図らずも2曲共にボーカルパートが非常に少ない曲となっております。
そしてオープニングナンバーであるハイウェイ・スターを含めた他5曲が大阪フェスティバルホールでの録音となっております。
大阪フェスティバルホール
この大阪フェスティバルホールは(現在は立て替えられ中之島フェスティバルホールになっている)とにかく音響設備が素晴らしく、どの席にいても音が均一に聴こえ、音楽通であれば知る人ぞ知る超有名多目的ホールだったのです。
実際に数々のオーケストラやオペラ、ミュージカルを始めとする演奏が行われ素晴らしい音を残しております。
稀に大阪フェスティバルホールで検索すると音が悪いとレビューが出たりします。この辺は音楽の聴き方に対する主観をどこに置くか何ですけど、基本的に新しくなった中之島フェスティバルホールのことの方が多いです。大阪フェスティバルホールと中之島フェスティバルホールでは音響設計を受け持った所が違いますんでね。
残響音に関してはオーケストラとピアノじゃ全然違いますし、残響音が同じなんて楽器はこの世にありませんから。
聴き比べ
まぁ、実際に聴き比べてみると確かに日本武道館での録音曲より大阪フェスティバルホールでの録音曲の方が各パートのエッジが立っている、と言うか輪郭がはっきりしている様に感じます。
当時の大阪フェスティバルホールはレコーディング・コンソール部屋が別に用意された唯一の会場だったそうです。なのでミックスもしやすかったのではないでしょうか。
もっとも、この辺は録音会場が違うと知ってから聴いたので、普通に聴いてたらまず分かりません。ただし、超高級オーディオで聴けば違いが分かるのかも知れませんがね…
蛇足② ライブの聖地は日本武道館?
さて、外国のロックバンドのメンバーからは日本武道館でライブをすることがステータスとも言われています。この理由の一つにライブ・イン・ジャパンも関係しています。チープ・トリックのチープ・トリックat武道館は置いといて(あれも実際は大阪厚生年金会館なのだが)、メタリカのラーズ・ウルリッヒは「メイド・イン・ジャパンは日本武道館で録音されただろ? だから日本武道館は日本のライブの聖地なんだよ」と答えたことがありました。
日本武道館は柔道が行われる前提で建設された多目的ホールなので、音質だけ取ると決してライブに向いている会場ではないのです。
しかし、武道館と大阪では言葉の響きが違います。『世界戦略』としてリリースを考えた場合、日本武道館ネームバリューがアルバムタイトルやレコーディング環境の代名詞みたいな感じで取られたんですね。
楽曲紹介は簡単に
ライブ・イン・ジャパンは全曲素晴らしいのですが、敢えて特筆するならストレンジ・ウーマンですかね?
この8:10からのイアン・ギランの人外シャウト! まぁ、ビビりましたね。いったい何時迄声伸びるんだ? って、感じです。
客は分からなかった筈
このライブ・イン・ジャパンのラストを飾るのはスペース・トラッキンです。マシン・ヘッドでのスペース・トラッキンは5分にも満たない曲です。
しかし、ライブ・イン・ジャパンでのスペース・トラッキンは約20分の超大作! それもそのはず、約5分の曲が終わるとそのまま怒涛のアドリブ合戦に入るからです。
このライブ・イン・ジャパンでのスペース・トラッキンを聴いて思ったのは、客が曲の終わりを理解していなかったであろうと言う反応です。
実際に曲の15:50秒頃に曲が終わったと思った客が拍手し出してますからね。しかし、曲は続き、18:50秒で本当に曲が終わります。ところが客側からすれば、特に決めもないまま曲が終わったので、数秒間の空白期間が訪れます。そして客が曲が終わったのだろうな? と思い始めたところで拍手がポツポツと起こりだす、と言う何とも閉まらないエンディングを迎えるのです。
タカミックスも最初に聴いた時は何て締まりのないエンディングだ! と思いました。
そんな締まりのないエンディングですが、今聴けば何て締まりのないエンディングだ! と矢張り変わらず思っています。
まとめ
このライブ・イン・ジャパン、もしくはメイド・イン・ジャパンは本当にライブバンドとしての第二期ディープ・パープルの凄さが分かる名作です。何か月並みな感想ですけど、是非御一聴を!